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愛が足りない

長野のグループホームにいる祖母と、手紙のやり取りをしています。

やりとり、とは言っても、
祖母と私は、価値観も好みもまったく正反対で、
共通する興味というものも、いっさいありません。

もともと東京で一人暮らしをしていた祖母ですが、
認知症などで一人暮らしが困難になり、グループホームでお世話になることになりました。
見知らぬ土地で、見知らぬ人たちとの共同生活を余儀なくされた祖母に、
わたしもすることがあるわ、
と 少しでも思ってもらいたくて、手紙を書いてみたのがきっかけでした。

お互いの日常のできごとが主な内容ですが、
祖母の手紙には、よく、
自分のこれまで生きてきた人生の価値観を否定するような表現、
でも他の何も受け入れられず、今現在が不幸であることが、つづられています。

幸せな気持ちで日々を過ごしてもらいたいわたしは、
自分なりに思うところを綴るのですが、祖母にはそれが、伝わらないようでした。




ルルドの泉をご存知でしょうか?
フランスのルルド、
貧しい一人の少女・ベルナデッタの前にあらわれた聖母マリアが
彼女に示した場所から 泉が湧きあふれ
その水に触れ、飲んだ人の病気やけがが、癒されていったのだそうです。
今でもルルドは 
奇跡の癒しを求めて たくさんの人が訪れる巡礼地となっています。

聖母マリアにお告げを受けたベルナデッタですが、
身体が弱く 病に苦しみ、若くして亡くなっています。
そのベルナデッタのお部屋の壁には、
彼女のこんな言葉を書いた額がかかっているそうです。

“問題は病ではない 
 むしろ、愛がたりない”

どういう意味かな?
いろんな意味にとれる言葉です。
ベルナデッタがどんな気持ちでこの言葉を口にしたのか、わたしにはわかりませんでした。


ある日、祖母からの手紙を読んでいた時、
突然、
この言葉が心に浮かんできました。

ああ、わたしには 愛がたりない。


幸せな毎日を過ごしてもらいたいと、わたしが書き送っていた言葉。
でも、祖母に必要なのは、
アドバイスや忠告ではなく、
同情や慰め、自分の存在を肯定する言葉ではなかったかと。
あなたは大事な人ですよ、と、伝えることだったのだと、思ったのです。



ベルナデッタがどんな意味を込めて、この言葉を口にしたのか、
わたしにはまだ わかりません。
祖母の心に寄り添ってあげることも、まだまだ難しい。
あまりの価値観の違いに、どう返事を書いていいのかわからず、
薄っぺらな手紙を書いてしまうこともしばしばです。

人の心に寄り添うというのは、本当にむずかしいことですが、
この言葉を知って、少しだけ、
自分の足りない部分に気づくことができたのかもしれません。
by patofsilverbush | 2014-01-28 09:12 |

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