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12月のおばあさん

アンデルセンの童話に 

『馬車できた12人のおきゃく』

というお話があります。

みしみしいうような寒さの、星が美しい、風ひとつない、
静かなお年とりの晩のこと。
街の門の前に駅馬車がやってきて、12人のお客がおりたちました。
順々に馬車から降りてくる、立派な紳士や陽気な若者、歌姫や姉弟たち・・・
そう、彼らは12の月の精たちなのです。

子供のころから好きなお話で、年末が来ると、毎年なんとなく思い出します。

一月は クマの毛皮の外套を着て、長靴をはいた、立派な紳士。

二月は謝肉祭をもりたてる道化師。

三月はキリストのご受難の月なので、断食節そのもののような 質素な人。
ボタン穴にすみれの花束をさしています。

四月は陽気な若者 エイプリル・フール。

五月は美しい森の歌姫。

六月は若い奥さん。昼間のいちばん長い日に、パーティーをひらきます。

七月はその弟くん。持っている荷物は 海水帽と水泳パンツだけ。

八月は2人のお母さんの八月夫人。
果物商であり、養魚場の持ち主でもあり、額に汗して働く お百姓でもあります。

九月は絵描きさん。色彩の大家で、森の木々はこの人をみると、葉の色をかえるのです。

十月は犬を連れた地主さん。

十一月は風邪をひいてはいますが、木挽き組合のおやかたです。

馬車から最後に降りてくるのは十二月。
火壺と、小さなもみの木をもったおばあさんです。

「わたしは
気長にこの木の世話をして、
天井まで届くくらいのおおきなクリスマスツリーにしてやりましょう。
木のてっぺんの天使は、つばさをひらひらさせながら、
部屋の中の子供たちにも、
部屋の外の貧しい子供たちにもキッスするでしょう。」


『一年たって、この人たちが、
わたしたちにどんなことを持ってきてくれたか お話しましょう』
・・・と、お話は締めくくられます。

『いまはまだ、わたしにはわからないし、
この人たちだって、自分でもきっとしらないでしょう。』


一年がもうすぐ終わろうとする今、
私の中のおばあさんが 丹精込めてたいせつに育ててくれた 心のツリーを前にして、
わたしは美しいなと思います。

きれいなツリーになったな。
ぴかぴかに磨いた飾りもあるし、磨ききれなかったものも。
古くからあるオーナメントもあるし、
あたらしくやってきたものもある。
完璧じゃないけど、うん、わたし好み!つまり、わたしらしいツリーだな、と。

また新しくやってくる一年に、
この12人の人たちが何をもたらしてくれるのか 楽しみだし、
それがどんなことなのか、想像もつかないことにわくわくしながら
おばあさんが持ってきてくれる、また小さなツリーを、
大きく大きく育てたい。
育った木で、いつか森ができるかもしれない。

なんて。
現物のツリーを眺めながら考える クリスマス・タイムです。










by patofsilverbush | 2014-12-23 14:02 |

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by anne