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『長い冬』

アメリカの西部開拓時代に生きた ローラ・インガルス・ワイルダーは、
彼女の半生を物語に綴りました。

ドラマにもなった、『大草原の小さな家』シリーズがそれです。

「大きな森」に住んでいた、うんと小さな頃から始まり、
農作物がたくさんとれる 豊かな大地を目指して、大草原に移り住み、
自分たちの農地をさがす旅の日々・・・

やがて農地を見つけ、結婚するまでの日々を、ローラは幾冊もの本に綴ってゆきました。


フロンティアの生活は 過酷です。

自然の美しさを謳うモンゴメリの作品に対し、
ローラの本には、
時に 読むのがつらくなるほどの自然の脅威が描かれています。


突然、空から降ってくきた いなごの集団に、その年の収穫を食いつくされたり、
日照りや、たつ巻、猛吹雪など、
人々は、自分の力ではどうすることもできない、強大な自然の前に、
なす術もなく立ちつくしてしまうことも、しばしばあったでしょう。


現金収入がない暮らしは、豊かとはいえません。
お店がすぐそばにないことも、もちろんですが、

ローラも、姉のメアリーも 
「あしながシギ!」と 男の子たちにからかわれながら
丈が短くなりすぎた、つんつるてんの服で学校へ行かなければなりませんでしたし、

学校で必要な石板や石筆を買うのにも、
母さんは大事なお金を丁寧に数えて、わたしてくれます。
その母さんの手振りを見れば、
そのお金が貴重であることは、
きっと子供であるローラにも、伝わったことでしょう。


数々の困難にもかかわらず、
でも ローラの本は

とても明るく、希望に満ちています。

決して豊かとはいえない食卓なのに、
そこには家族がそろっていて、
話し声や笑い声、笑顔があふれ、
食事がすんで眠る頃には、父さんのヴァイオリンが流れてくる。

食事の匂いや手触り、その楽しげな雰囲気までつたわって、
みんなの声が聞こえてきそう!
ページにあるのは活字と、白黒の挿絵なのに、
いろんな風景が色つきで見えてくるのです。
 

自然の脅威だけではなく、その美しさ、豊かさも描かれるローラの本は、
なんていうか、
とてもすこやかです。
大きな自然の中で、人間も、動物も、
そして「自然」そのものも、
同じように生きている、ということ。


そして、一番素晴らしいのは、
どんなことがあっても、
どんなに絶望的に見えても、
「ここからどうにかしよう!」という気骨や、心意気に、ローラの家族があふれていることです。

打ちのめされても、どうにか生きていこうとする力。

「ガッツだ!」と、誰も声高に叫ぶわけではないのですが(笑)、

困難にぶつかっても、
人生に対する信頼や希望をなくさない。

シリーズの中の一冊である 『長い冬』は、
ある年の、それはそれは厳しかったひと冬の物語です。
猛吹雪に次ぐ猛吹雪で、汽車も止まってしまい、
大草原にぽつんとできた、小さな町の店には、
食べ物がなにも届かなくなってしまいます。

薪も石炭もなくなり、飢えと寒さを、必死に凌ぐローラたち。

一冊ほとんどが雪!吹雪!というような本なのですが、
わたしはこの本が一番好き。

やがてきた春の喜び!
友達と再会し、太陽の光を浴び、
ようやくやってきた汽車で届いた、数カ月遅れのクリスマスの樽をあけてお祝いする
ローラたちの、
生きていることへの感謝や喜びが圧巻で、何度読んでも感動してしまう。

今年の冬は寒いので、なんとなく ブログに書いてみましたが、
実際に冬であることはもちろん、

そうではなく、

人生の困難に直面しているとき、
心が暗い吹雪に閉ざされてしまっているときにも、

きっと春は来る!
ということだけは、信じていたいと思います。

便利になった世の中ですが、
生きていることは、いつでもフロンティア。
読むといつでも、勇気や希望をくれる、
『赤毛のアン』と同じくらい、大好きな本です。
by patofsilverbush | 2015-01-09 10:06 | 本・映画

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