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ありのままの

夕立があったある日、虹が出ました。


西の空は夕方の、黄金のるつぼ。
虹のあとには、薔薇色がかった灰色の雲が、どんどん広がって、
なんともいえない、不思議な、美しい空模様でした。



庭に咲いた早咲きの水仙が、
この数日の
眠りに落ちる瞬間や、
朝、目覚めた瞬間を彩ってくれました。

こんなドレスがあったら可愛いな と、モンゴメリの小説のように思ったり。


夏目漱石の『それから』の中に、
ヒロインの三千代が、
鈴蘭のいけてあった鉢から水を飲む、想像するだに美しい場面があります。

気分が悪く、水が欲しいという三千代のために、
主人公の代助は 台所へ水を汲みに行きますが、
書斎へ戻ると、三千代はすでにコップを手にしています。


  『「有難う。もう沢山。今あれを飲んだの。あんまり綺麗だったから」
    と(三千代は)答えて、鈴蘭の漬けてある鉢を顧みた。
    爪楊枝位な細い茎の 薄青い色が、水の中に揃っている間から、
    陶器の模様が仄かに浮いて見えた。                 』


かつて
想っていた三千代を 親友に譲ってしまった代助は、
彼女が親友と結婚してしまったあとで、
彼女への愛を はっきりと自覚し始めます。


代助・三千代・親友の平岡をめぐる関係を描く『それから』は、
今どきの不倫もののような気持ちの悪さは まったくありません。
漱石の筆はあくまで潔癖で、
三千代の清潔な美しさは、
こんな花の描写にも表れているような気がします。

愛することと、現実に対処する苦悩。


水仙も 鈴蘭も、香りたかい花ですが、
植物の香りは、アロマオイルとは全く違う、
独特の 冷たい清潔さがありますね。


人は自然に癒される と言いますが、
人工的でない、
ただ、あるがままにみせてくれる その美しさに、思わず素直に心をひらくことが、 
リラックスにつながるのかもしれません。


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by patofsilverbush | 2015-03-03 09:24 | 生活

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by anne