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伝道書

『赤毛のアン』が有名な モンゴメリですが、
他にも いくつもの長編小説と、膨大な数の 短編小説も執筆しています。


作家を目指す少女が主人公、ということで、
「もっとも自伝的」 と評されることも多いのが、
『かわいいエミリー』・『エミリーはのぼる』・『エミリーが求めるもの』
の三部から成る、エミリー・シリーズ。
両親 亡きあと、母方の叔母たちにひきとられたエミリーは、
叔母の無理解や 厳しさにあい、葛藤しながらも、
作家への道をひたむきに歩みます。


生まれつき、自然の美に対して敏感で、繊細な心を持つエミリーは、
ふとした瞬間 垣間見える、
その美しさを表現する「言葉」を、常に探し求めます。
ベール一枚へだてた向こうに広がる、美しい世界。
一瞬、ベールがあがった時にだけ、ちらりと見ることをゆるされる、
その瞬間のときめきを、
エミリーは「ひらめき」と表現します(村岡花子・訳)。
「ひらめき」が訪れた瞬間に見える、あの世界を、表現する言葉。


ただ単純に、世界がどう見えるか、
どんなふうに花が咲き、どんなふうに日が輝き、
どんなふうに夕日が沈むのかを描写するだけではなく、
エミリーは その風景の真髄を捕えようとするのです。




見つけた!と思っても、次の瞬間には、
まったく表現しきれていないと悟る・・・


エミリーが捕えようとしているのは、
神さまの世界 ではないかと思うのです。
キリスト教で言うところの、「御国」ですね。



何を見て、神を感じるか?ということは、
人によって、まったく違うことです。

わたしは、戸外にいるときに、より神さまを身近に感じますが、
神さまがお創りになった世界の美しさを、目でみて、感じる、
ということで、
自然の中に神を感じる人が、もっとも多いのではないかと思われます。
多くの芸術家や、詩人、作家などが、そうであるように。


人間には入ることをゆるされない、天上の美。
それは単純に「美しい」だけの世界ではありません。


神さまが与えて下さるものの、
その 豊かさ!
慈愛、安心、欠けるものの何一つない平和、静けさ、幸福、思いやり、誠実さ・・・
ありとあらゆる善きもの、美しいものを与えて下さる、その惜しみのなさ!
その、
満ち足りた世界、
神さまの み心の真髄を、
ダイレクトに 「人間の言葉」 で表現するのは、
非常に難しいことですね。


エミリーが探し、求めているのは、その「言葉」なのです。




一口に 「神を信じます」 と言っても、
どのように、どんな神さまを信じているかは、
これまた人によってまったく異なることです。
同じ神さまの、さまざまな側面を、
自分の目で観られる範囲しか 見えていないのが人間なのですが、

それでも、神さまは、
一人ひとりに ぴったり合った表し方で、
ご自分を表して下さるような気がします。



エミリーが「自伝的な」小説であるならば、
モンゴメリ自身が、
その主の み心を表す言葉を、常に探し求めた作家であった
と言えるかもしれません。

それを読んで、主へと導かれたわたしですので、
主は、もっともわたしに合ったやり方で、
ご自分をわたしに表してくださったのだと思うのです。


「キリスト教の在り方」に懐疑的であったと言われるモンゴメリ。
彼女が常に疑問に思い続けた、「キリスト教」の問題は、今でも常に存在しますが、
モンゴメリは、
「○○教を信じる」という、宗教の枠組みにとらわれず、
ダイレクトに「神さま」を信じた人だったのだと、強く感じます。


そんな彼女の小説は、まさしくわたしにとっては、伝道書なのです。





























by patofsilverbush | 2015-06-01 13:03 | 本・映画

日々のあれこれを綴ります


by anne