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その他大勢の心意気

バレエをご覧になったことがおありですか?
ぱっと想像してみたときに、
たとえば白鳥やお姫様を踊っているのが主役。
そのまわりに わらわら群がって大勢で踊っているのが、
いわゆる「その他大勢」。群舞、コールドバレエといいます。


通っていたのはその辺によくある、ごくごく普通の小さなバレエ教室でした。
バレエを習っているあいだ、どんな気持ちで練習していたのか、
ふりかえってみると、
やっぱり「憧れのお姉さんのように、奇麗におどりたい!」
バレエはさまざまなパ=動きの組み合わせで成り立っており、
ただ走る、ただ歩く、だけであっても、そこには(厳密にいえば)決まったパのポジションがあるわけで、
「できないパができるようになりたい、
できることなら、もっと美しくできるようになりたい」
という気持ちが、もちろん一番強かった。

それでも、中学生や高校生になると、
「いい役がつくといいなぁ」という欲もでてきたりして、
その頃はすごく、自分でもつらかったように思います。

「いい役がつくか、つかないか」
それは常に他人との比較を伴うことであり、
できない劣等感や、はたまた「わたしのほうが動けるのに、なぜ?」というライバル意識や、
全体のバランスを考えたときに「背が低い」という理由で選ばれないなどということもあり、
ある種の理不尽さを体験したのも、10代の頃でした。


背が低くたって、実力で主役になれるように、
もっと練習すればいいだけの話ですけどね(笑)。
そこまでの努力はしなかった!と、今は思います。

バレエは総合芸術ですので、
主役がうまくても、群舞の質が低ければ、全体のレベルはぐっと下がります。
年齢も、経験もばらばらのバレエ教室で、群舞の質を上げるためには、
ある程度、動ける人が群舞に入っている必要性もある。
底上げをすると、全体の質はアップするのです。
・・・と、今なら思うのだけれど、
やっぱり若くて傲慢な頃は、いい役が付かないと凹んだり、不満に思ったり。
コールドバレエ、おもしろいじゃん!
と思えるようになるまでには、数年かかりました。


全員の指先まで、あげた足の高さまで、ぴったりそろうのが、コールドバレエの魅力。
(シンクロみたいに)
「私はできるから」と、一人で勝手に足をアクロバットのように上げることは許されません。
全員の動きがぴたっと揃うまで、幾度も繰り返される練習。
何年もバレエを習っていて、きちんと基礎のある人も、
バレエを始めたばかりの人も、
誰一人、目立つことなく、手を抜くことなく、
それぞれがベストを尽くした時に生み出される美しさ。
「自分が自分が」という自己主張を殺し、
自分のできる最高の動きをしつつも、他の人の動きを強く意識して、
はじめて生み出される美しさ。

それがわかるようになってからは、コールドバレエは本当に楽しかったです。
そして、舞台の上にいる時間が、たぶん一番長いのも、コールドバレエなのです。


それぞれが、それぞれの役割にベストを尽くし、
最高のハーモニーが生れる。
家庭や、仕事の現場でも、きっとそうなのだと思います。


芸術の秋、ということで、
バレエを鑑賞する機会がありましたら、主役の美しさはもちろんのこと、
コールドバレエの美しさも、ぜひ楽しんでみてくださいね。






by patofsilverbush | 2016-10-14 14:16 |

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by anne