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IT'S ME

いくつくらいのころだったか、まったく覚えていませんが、
子供のころ母に
「この女優さん、樹木希林さんというのよ」と教わった?ときに、
「え、きりんさん!名前がきりんさん!」といたく感銘を受けた(笑)記憶があります。
およそ人の名前にはしそうもない、意表を突くネーミング、
なんておもしろい!

同じように、
「この人が昔話の女優さんよ」と母に教わって、
「え、この人が!」と衝撃を受けたのが、
市原悦子さんでした。
わたしにとっては“日本昔話の声の人”。
テレビから録音したと思われる日本昔話の、
あのやわらかな語りに重なって、
赤ちゃんころの私の声がばぶばぶと入っているカセットテープが出てきたことがあったっけ。
その声の人が、女優さんだったということに驚いたのでした。

先日、市原さんの訃報を受け 流れていたニュース映像の中に、
日本昔話についてお話しされているものがありました。

「最初、とてもテンポがよくて、さーっとお話が流れるようなものであったから、
もっとゆっくりしましょうよ、聞いてる人が眠くなっちゃうくらい、
って言ったんですよ。
♪ぼうや~よいこだねんねしな・・・って流れてきたら眠くなっちゃうくらい、ゆっくり」
そんなようなことを話されていて、
ああ、だから、
小さな子でも、よくわかったんだなぁと思いました。
早口で流暢に語られていたら、きっと小さな私の心には染み透らなかった。
お水が土にしみこんで、
その水を植物の根が吸い上げるように、
ゆっくりと心に染み透っていった昔話の数々。
そんなふうにゆっくりじっくり身に着いたものは、
血や肉や骨となって私を作り、支えてくれてる。
「わたし」を作るのは、食べ物や運動ばかりではないのです。


今、市原さんの言葉を聞いて思うのは、
テンポが速いと感じたら、速度を落としてもいいのだな、ということ。
なにかとスピードや効率が求められるけれど、
機械の速度と人間の速度は、本当は全然違う。
なんとなく速くしなくっちゃと焦らされ、実際にあせってしまうこともあるのだけれど、
心や気持ちにあった、ぴったりくる速度を、
各個人が見つけてもいいのだなと思い、ちょっとほっとしたのでした。



声の仕事をするときに大切にしていることはと聞かれて、
「五感を大切にしたい」と話されていたという市原さん。
何かに触れたとき、風が吹いた時などに感じる、その「感じ」を大切に
ナレーションしたい
という言葉は、本を音読するうえで、
そしてまだ時々、息子に読み聞かせする時にも、
心に留めておきたい言葉でした。


飾らない、人と同じじゃない自分でいていい。
ということを体現してくださった二人の女優さん。
今、この年齢になって
人生の先輩として感じることがたくさんあります。







by patofsilverbush | 2019-01-18 14:12

日々のあれこれを綴ります


by anne